単語ルーレットで出たワードで小話を書いてみる(つづき)

 

 

 

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

 

本日は、前回に引き続き小話の続きとなっております。

 

なお記事の趣旨としては、単語ルーレットで出た3つの単語を用いて文章を作成するというものになっております。

 

詳細は以下、前回の内容に記載しておりますので、そちらをご覧ください。

sunken-rock.hatenablog.com

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ 食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思うので、以下に昨日の夕飯の画像を載せております。

 

昨日の夕食

 

前回掲載した内容に少し追記しました

 

後半の展開の都合上、前置きとして触れておいた方が良いかなと思うところがございましたので、前回掲載部分(灰色)とともに追記箇所(オレンジ色)を載せておきます。

 

 

 

『つーまんね』

 

座り心地の悪いパイプ椅子にふんぞり返りながら、俺はこの日一番の退屈をかみしめていた。

 

 

何が楽しくて、こんな子供だましのマジックショーを見ていなければいけないのか。

 

 

あぁ、早く帰って「デビハン」の続きがやりたい。

 

退屈を紛らわせるように思いをはせるのは、おれがこのところ毎日のようにやりこんでいるテレビゲーム、「デビルズハンター2G」。

 

四天王の最後の一人がなかなか倒せなくて一昨日から苦心しているのだが、3日後にはゲームを兄ちゃんに返すことになっているから、今日は何としても先に進めなければ。

 

 

まぁ、ちぃとばっかし約束を過ぎたところで、どうせ人がいい兄ちゃんのことだ。

 

別に怒ったり、催促したりとかは、しないだろうけど・・・

 

おれとしては、やはり少し気が引ける。

 

 

実はと言えば、おれはこの前ほかのゲームを貸してもらったときに、間違って、ずっと前に兄ちゃんがたたき出した最速記録のクリアデータを消してしまっていた。

 

その時も兄ちゃんは、

 

『また記録更新すればいいから』

 

なんて言って許してくれたけど、今の兄ちゃんにあんな記録を出すことは無理なんじゃないかというのが、おれの正直な感想だった。

 

 

だから、それ以来おれはゲームの貸し借りにおいて小さなミスもしないよう、気を付けているのだ。

 

なんだか、兄ちゃんの人がいいのに付け入るような感じがして、あまり気分が良くないから。

 

 

そう。

 

兄ちゃんは昔から人がいい。

 

古いゲームをたくさん持っていて、おれが今まで興味を持ったものは全部貸してくれた。

 

ソフトもハードもいっぺんに持って行って良いって。

 

 

そんなだから、お小遣いを貯めるのが苦手なおれでも、遊ぶゲームに不自由したことはなかった。

 

時たまにグラフィックがきれいな最新ゲームのコマーシャルに興味を惹かれることもあるけれど、ドットの荒いゲームも味があって十分に楽しめる。

 

 

そういえば前に一度、兄ちゃんは最新のゲームに興味はないのかと、聞いてみたことがあっただろうか。

 

確かその時は、

 

『興味がないことはないが、操作についていけなくてな』

 

なんて言いながら右肩を『パシッ』と左手ではたいて、冗談めかしていたっけ。

 

 

あの寄り目をした兄ちゃんの何とも言えない顔ときたら。

 

おれは、その表情を思い出しかけて、少しだけ笑いがこみ上げそうになってくる。

 

 

その時。

 

『ドッガシャーン!!!』

 

 

突然、耳をつんざくような大きな音が響き渡り、俺が退屈真っただ中の現実に戻ってくる。

 

どうやら回想にふけるあまり、しばらく上の空になっていたらしい。

 

 

俺は音にビビッて少し体が跳ねてしまったのを、うぅんと伸びをしてごまかしつつ、ひとまず気を取り直す。

 

そして何事が起ったのかとあたりを見回すと、ステージの真ん中で、それが横たわっていることに気づいた。

 

 

さっきの音の原因となった張本人。

 

いつの間にかマジックショーに登場したピエロが、バケツに片足を突っ込んで盛大にずっこけているところだった。

 

 

 

 

 

ステージの上ではあいも変わらず調子の抜けた音楽に合わせて手品師がネタを披露し続けているが、そのどれもが、どこかで見たことがあるような使い古されたものばかり。

 

あまりの芸のなさに早々に見切りをつけたクラスメイトたちが数人、さっきこの体育館を抜け出していってしまったのをの思い返しながら

 

『俺もバックレれば良かった』

 

なんて後悔しながら、5回目のあくびが出て目をこする。

 

 

今日は年に一度の学園祭。

 

俺の通っているこの中学校では毎年の恒例行事となっている。

 

学園祭とはいうものの高校や大学とは違い生徒の自主性はほとんどなく、あらかじめ学校側が用意した催しを適当に回るだけ。

 

このマジックショーも、そんな催しの1つとしてわざわざ招待されてきたものだ。

 

別に何を企画しようが学校の勝手だが、このショーだけは例外。

 

午前中一杯をつかって学年ごとに順番でショーを見るよう、きっちりとタイムスケジュールが組まれていたものだから、他を回るつもりでいた多くの生徒から不満の声が上がっていた。

 

まぁこっちから招待しておいて『お客さんが集まりませんでした』じゃバツが悪いから、最低限の配慮ってやつなんだろうけど。

 

まったく、大人の都合に振り回される俺らの身にもなってほしい。

 

しかも、よりにもよってなんで、俺ら2年生の順番が一番最後なんだ?

 

また、あの押しの弱い学年主任のせいか?

 

早くしないと、楽しみにしいてた屋台のコロッケサンドが売り切れてしまう。

 

 

 

 

 

結局、ショーが終わったのは12時30分を回ったころ。

 

おれは体育館からダッシュでお目当ての屋台に向かったものの、着いた先の屋台の脇に裏向きで「コロッケサンド」と書かれた看板が立てかけられているのを見て、なんとなく状況を察した。

 

しかし、まだ営業準備中という可能性も残っている。

 

コロッケサンドを諦めきれなかったおれは思い切って、近くにいた店主と思われるおじさんに店の開店時間について尋ねてみた。

 

すると、おじさんは少し驚いたような顔をしながら、おれの方を振り返ってくる。

 

どうやら何か作業の途中だったようで、おれの言ったことが上手く聞こえていなかったらしい。

 

『おれ、コロッケサンド買いに来たんですけど・・・』

 

今度は率直に用件を伝えると、おじさんは状況を飲み込んで、首から下げていたタヲルをはずしながらおれに向き直り、

 

『あー、ごめんね、今日はもう終わっちゃったんだよ。』

 

と答えてくれた。

 

やっぱりな。

 

9割がた予想はしていたけれど、少しばかりすきっ腹にこたえる。

 

『そうですか、ありがとうございました。』、

 

『お仕事中お邪魔しました。』

 

そうお礼を言って、おれがおじさんにカクっと頭だけを少し下げて見せると、おじさんの方も軽く片手を上げながら会釈を返してくれた。

 

そして、おじさんが屋台の骨組みを取り外しにかかったのを見て、おれはがっくりと肩を落とし、しかたなく自分のもと来た方向へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

俺は腹が立っていた。

 

実はコロッケサンドの屋台を後にしてから他の店も回ってみたのだが、目ぼしいものはすでに、全て売り切れてしまっていたからだ。

 

かろうじてありつけたのは、あんぱん二つと200ミリリットルのパック牛乳一本だけ。

 

なんだよあれ。

 

どこにでも売っているような袋パンと牛乳なのに、コンビニより割高じゃんか。

 

なにより、俺はつぶあん派だってのに。

 

つまらないマジックショーのために昼食のあてをつぶされたあげく、他にまともな選択肢もないなんて、本当に冗談じゃない。

 

その上、さっきバックレたクラスメイトたちが美味そうにコロッケサンドをほおばっているのを見かけたものだから、余計に頭にきている。

 

俺は教室の前まで戻ってくると、たてつけの悪くなった引き戸のつっかえるのも構わず、力任せにずらし開いた。

 

 

なんだ?

 

少しばかり教室が騒がしい。

 

何事かと思い、適当なグループに割って入ってよくよく話を聞いてみると、どうやら意外なことにさっきのマジックショーの話題で盛り上がっているようなのだ。

 

『あのピエロの切断マジック、マジヤバくなかった?』

 

ここでみんなが話している切断マジックというのは、ショーの最後の山場に披露されたパフォーマンスで、手品師が巨大な剣でピエロの右腕を切り落とし、再びくっつけるというものだ。

 

たしかに、他のマジックはどう考えてもトリックが見えみえだったのに、あのときピエロが腕を切り落としたカラクリは見当もつかなかった。

 

だから、クラス全員で各々が考えるトリックの予想を披露しあっているうちに、だんだんとヒートアップしていったということか。

 

 

なるほどねぇ。

 

そんなクラスメイト達の様子を見て、俺はある一つのへそ曲がりな考えが頭に浮かび、次にそれが口をついて出る。

 

『おまえら、そんなに気になるんだったら、俺があばいてきてやろうか?』

 

『ぇあ?』

 

隣にいた一人の男子が馬鹿笑いをやめて、つぶれたカラスのような鳴き声を上げる。

 

『だから、俺があのピエロの腕の秘密、突き止めてやるって言ってんの!』

 

『マジックショーは午後も公演予定があるから、あのピエロは今ごろステージ脇の控室で休憩をとっているはずだ。』

 

『分かるだろ? 潜入するんだよ!!』

 

俺が一層大きな声で言い放つと、一瞬あたりが静まりかえったが、ややあって、つぶれたカラスがもう一声を上げた。

 

『やめとけよ、さすがにそれはヤバいって。』

 

なんだよ。

 

おまえらその程度かよ。

 

腹が立っていたせいで、俺もいつもより少し勢いづいていたのかもしれない。

 

予想外に周りのノリが悪いことが面白くなくて、クラス全員を一瞥(いちべつ)してからフンっと鼻を鳴らした。

 

念のため、他についてくるやつがいないかと思い呼び掛けてはみたが、みんな興味はあるものの、リスクを冒して潜入するまでの気はないようだ。

 

いつもは先生たちに反抗しまくっている悪ガキどもでさえ、外部の人間に手を出すのはマズイと考えているらしい。

 

意気地なしどもめ。

 

 

普段の俺ならここでシラけてしまって、実行には移さなかっただろう。

 

だが今日の俺には、あのマジックショーに個人的な恨みがある。

 

下に恐ろしきは食い物の恨み。

 

コロッケサンドを食いそびれた憂さ晴らしに、おまえらの秘密を学校中に言いふらしてやる。

 

午後のステージにあのピエロがどんな顔で立つかと思うと、今から楽しみでしかたがねぇ。

 

覚悟しとけよ、「腕なしピエロ」!!

 

 

 

 

 

ステージ脇の控室前。

 

ここまでは拍子抜けするほどすんなりと来られてしまった。

 

途中で2度ほど先生に声をかけられたが、どうせ午後はフリータイムだから、どこにいようがとがめられることはない。

 

むしろ、マジックショーのために早く体育館に行って良い席を確保しておきたいなんて言ったら、笑って送り出してくれた。

 

もちろん嘘はついていない。

 

俺専用の特等席で、あのピエロの裏のうらまでしっかりと見てやる。

 

 

しかし静かだ。

 

ここに着いてかれこれ5分。

 

舞台袖の幕の陰に隠れて様子をうかがっているが、人の気配どころか、中から物音ひとつしない。

 

出かけている?

 

確証はなかったが、しびれを切らした俺は意を決して、控室のドアをノックした。

 

もしも誰かいたら、適当に応援の言葉でもかけて出直せばいい。

 

だがそんな俺の心配をよそに、中から返事はなかった。

 

 

そっとドアノブに手をかけ、回す。

 

ぐいと力を込めて、ほんの指一本分ほどだけドアを開けると、『カチャリ』とラッチが音を立てた。

 

中からの反応はない。

 

 

指三本分。

 

そのすき間に顔の片側をひっつけて、中の様子を覗き見る。

 

いないぞ。

 

 

俺はもう、思い切ってドアを開けて中に入り、急いで、それでいて静かに閉めた。

 

やはり、控室の中には誰もいない。

 

 

俺は安心して力が抜けそうになったが、まだ目的を果たしていないことを思い出し、頬を張って気合を入れなおす。

 

今が絶好のチャンスだ。

 

このままどこかに隠れて、ピエロが戻ってくるのを待ち伏せよう。

 

 

幸いにも隠れ場所はすぐに見つかった。

 

控室の奥の方、壁ぎわに寄せるようにして、学園祭の開会式で使った演台が置かれている。

 

ショーの邪魔になるからと、とりあえずここに運び込まれたのだろうか。

 

何にせよ、ピエロを待つには好都合だ。

 

 

俺は演台と壁のすき間に体を潜り込ませ、息をひそめる。

 

さぁ、準備は整った。

 

これより潜入ミッションを開始する。

 

 

俺はまるでスパイにでもなったような気分で、興奮して息遣いが激しくなるのを抑えつつ、ターゲットであるピエロのことを思い返す。

 

 

それはそうと、あのピエロどんな格好してたっけ?

 

たしか、ダサいメイクにへんてこな付け鼻と付けヒゲ、それにいびつな形のメガネ。

 

腕と足と、特にお腹まわりが風船でも詰めたようにパンパンにふくれていて、ピンクと黄色のスパンコールがチカチカする服には女性アイドルが着る衣装のようなフリルがたくさん付いていたはずだ。

 

いい歳してあんな格好して恥ずかしくないのかよ。

 

俺が大人になったら、あんな仕事はゴメンだね。

 

おまけに大勢の観客にあんなに笑われてさ。

 

さっきのショーでのピエロの情けないパフォーマンスを思い出し、俺は思わず顔が引きつった。

 

 

それはそうと、ピエロはいつ戻ってくるだろうか。

 

午後の公演までにはまだ少し時間があるはずだ。

 

 

いや、待てよ?

 

そもそも他の演者が先に戻ってくる可能性だって十分にあるじゃないか。

 

それに人数が増えれば、身動きも取りづらくなる。

 

もし見つかったら、ピエロの秘密を言いふらす俺の作戦も全て水の泡だ。

 

こんな奥の方に隠れていたら、余計に抜け出すのが難しくなるぞ。

 

 

そう思うやいなや、俺は演台の陰から出ようと身をよじらせた。

 

その時だった。

 

『カチャリ』

 

控室のドアが開いて、誰かが入ってきたのは。

 

 

小話「腕なしピエロ」(つづき)

 

間一髪だった。

 

ドアが開く直前、ブーツをはいたような硬い足音が聞こえたものだから、俺はとっさに演台から出しかけた体をもう一度内側に引きずりこんだ。

 

恐らくあのまま出ていたら、部屋に入ってきた誰かと鉢合わせしていただろう。

 

完全に肝が冷え切っていた。

 

壁にもたれかけた背中にまで振動が伝わるほど、心臓が激しく脈打っているのが分かる。

 

今はただ、呼吸音が聞こえないように息を殺すので精いっぱいだ。

 

しかし、いったい誰なんだ?

 

誰が戻ってきた?

 

ピエロか、あるいは他の演者か?

 

 

 

はやる気持ちを抑え、息が整うのを待ってから、俺はそぅっと、すき間から控室を見渡す。

 

かろうじて見えるのは、着ぐるみのような、でかいブーツ。

 

さっきの足音は、どうやらあれのようだった。

 

しかし、足だけではだれか判断できない。

 

ぶっちゃけ、ショーの間は前に座ってたやつの頭が邪魔で、足元なんか見えてなかったし。

 

それに、俺が確認したいのはピエロの右腕だ。

 

入ってきたのが誰にせよ、何とか全身が見えるようにしなければ始まらない。

 

そう考えた俺は音を立てないように、少しずつ、少しずつ身を乗り出して視界の範囲を広げていく。

 

 

腰丈まで見えた。

 

どうやらイスに座っている様子で、ひらひらとしたフリルが座面からはみ出して垂れ下がっている。

 

 

さらに目線を上げて、おそらく首元まで。

 

膨れ上がった胴体とチカチカするスパンコールが、肩と首の境目をあいまいにしていた。

 

 

とうとう頭まで、全身を捉える。

 

極めつけのダサいメイクに、付け鼻と付けヒゲ。

 

もうメガネは外していたようだが、確かにあいつだ、あのピエロに間違いない。

 

 

控室に入ってきたのはまぎれもなく、俺が一番会いたかったターゲットだった。

 

他には誰もいない。

 

 

やったぞ、俺は運がいい。

 

ついさっきまで自分の作戦の穴に気が付いてうろたえていたが、結果オーライだ。

 

こうして一番の当たりを引き当てることができたのだから。

 

 

だが、喜んでばかりもいられない。

 

ここからが本番なのだ。

 

 

ピエロは今、シートを使って顔のメイクを落としている。

 

あいつを探るなら、手元に気を取られて、おまけに目も閉じている今がチャンスだろう。

 

 

しかしそう意気込んだのもつかの間、ピエロがちょうど俺の目線の先で体を左側に向けているせいで、右半身が死角になってしまっている。

 

もちろん右腕も見えない。

 

 

ちくしょう。

 

あと少しだってのに。

 

何とかあいつの右半身を確認する方法を考えないと。

 

 

しかし、俺は結局そのまま何も考えが浮かばずに、グダグダと不毛な時間を費やした。

 

そして、

 

『ギィィィーン』

 

と、イスの脚が床にこすれるイヤな音をたてながら、ついにピエロが立ち上がってしまう。

 

どうやらメイクを落とし終わったらしい。

 

 

チャンスを逃した?

 

俺はほんの一瞬、何の成果も上げられなかったことを冷やかしてくるであろうクラスメイト達への言い訳を考えかけるも、すぐにかぶりを振って思い直す。

 

違う、そうじゃない。

 

これこそが本当のチャンスなんだ。

 

ピエロが立ち上がって、体勢が変わった今が。

 

 

俺は自分の居場所がバレるか否かのギリギリのラインまで身を乗り出して、立ち上がったピエロの全身をもう一度捉えなおす。

 

もうピエロの右半身もバッチリと見えている。

 

チェックメイトだ。

 

とうとう俺は、ピエロの腕の秘密を・・・

 

 

そう思うが早いか否か、俺の思考は完全に停止して、目の前の光景にくぎ付けになる。

 

その時のショックたるや、いままであんなに躍起になっていたピエロの腕の秘密なんて、もうどうでもよくなるほどだった。

 

 

本当に、もうどうでも・・・

 

腕の秘密なんて・・・

 

腕の・・・ 秘密?

 

 

いや、むしろ俺は最初からそれを知っている。

 

おれはあのピエロの顔を知っている。

 

 

冗談を言うときに右肩の骨の突き出したのを『パシッ』と左手ではたいては、おれを笑わせようと寄り目をする、あのなんとも言えない顔。

 

ゲームのコントローラーを扱いづらそうにしながらも、いざ対戦するといつもおれに圧勝して大笑いする、見慣れた顔。

 

あまりの衝撃におれは自分の状況も忘れ、気が付けば、自分の意志とは切り離された声帯がいつもと同じように、その名を呼んでしまっていた。

 

 

『・・・兄ちゃん?』

 

 

 

 

 

兄ちゃんは、おれの家の二軒となりにあるぼろアパートに住んでいて、うちの家族が今の家に引っ越してきて間もないころから付き合いがある。

 

あのころはまだご近所の勝手がよく分からず、ごみ捨て場にすらたどり着けずにうろついていたおれを、兄ちゃんが見つけて声をかけてくれたのが最初だった。

 

おれが朝ごみ捨てに外に出る時間と、当時の兄ちゃんが出勤するタイミングとが、たまたま同じだったらしい。

 

その時はおれも、『いい人だな』くらいにしか思っていなかったのだけれど、それを聞いたうちの母さんが、

 

『息子がお世話になりまして・・・』

 

だなんて、わざわざ挨拶しに行ったのだ。

 

それも、次の日の朝に兄ちゃんが出勤するのを待ち伏せてまで。

 

おれは小学生ながらに、

 

『そこまでするか?』

 

と内心かなり引いていたのを今でも覚えている。

 

ただ、当時はご近所の知り合いなんてまだ一人もいなかったから、おれから話を聞いて母さんは、これ幸いとばかりに兄ちゃんとお近づきになろうと考えたのだろう。

 

うちの母さん、結構したたかなところあるからな。

 

そういう流れで、おれたち家族は必然的に兄ちゃんに頼るようになるのだが、兄ちゃんも兄ちゃんで人がいいものだから、いろいろと親身になって教えてくれた。

 

町内会など地域の集まりのあれこれ、ややこしい資源ごみの分別から最寄りのスーパーのお買い得情報にいたるまで、本当にうちは家族ぐるみでお世話になっている。

 

ことおれにいたっては、新しい小学校のやつらよりも先に兄ちゃんと友達になって、よく遊んでもらっていた。

 

思えば、ゲームを貸してもらうようになったのも、兄ちゃんの家にまで潜り込むようになったのがきっかけだったか。

 

 

もちろん、うちだって世話になってばかりじゃない。

 

兄ちゃんがごみを出す日は、おれが訪ねていって運ぶのを手伝っている。

 

一人暮らしのくせして、兄ちゃんはやたらごみ袋の数が多いからな。

 

いったい何がそんなにも詰まっているのかと言えば、その原因は、兄ちゃんが毎日のようにスーパーやコンビニで買って食べている弁当とお惣菜の容器。

 

これが非常にかさばる。

 

 

その量たるや、こうも毎日味の濃いものばかりでは良くないと、状況を見かねた母さんが言い出したのも分かる。

 

おれもそう思う。

 

 

だからいつの頃からか、芋の煮っころがしだのひじきの炊いたんだの、母さんが多めに作った料理を兄ちゃんにも持って行ってやれと言うようになったのは、いたって自然な成り行きだった。

 

 

おすそ分けに行くときはいつも、詰められた料理がまだ熱いからとおれは鍋つかみを手にはめて、ぼろアパートまで小走りでいくのがお決まりの光景だ。

 

そうして、片手で持つのにギリギリ安定しないくらいには大きなタッパーを手渡すと、兄ちゃんはいつもたいそう喜んでくれる。

 

大げさだとおれは言うけど、兄ちゃんは自分で作るのが難しいからって、できたての手料理を食べられることが本当にありがたいらしい。

 

兄ちゃんがめちゃくちゃお礼を言ってくるのを毎度照れくさく思いながら、さっさと台所まで上がり込んで、流し台の脇に『トスン』とタッパーを置くまでが、おれの役目だ。

 

 

さすがに家の中まで上がり込む必要はないんじゃないかって?

 

そうかもしれない。

 

でも、おれと兄ちゃんの間ではこれで普通なんだ。

 

だって兄ちゃんには腕が片っぽしかないから。

 

 

どうやら、以前に事故に遭ったかなにかで大ケガをしていまい、切断せざるを得なかったらしいのだが、おれもそれ以上詳しい理由は聞かない。

 

きっとデリケートなことだと思うからだ。

 

 

 

ともかくそういう事情があって兄ちゃんは、中学生のおれから見てもいつも何かと大変そうにしている。

 

ごみを出すにも、家とごみ捨て場とを何回も往復しなきゃいけない。

 

おれが初めておすそわけに来たときだって、切り干し大根を玄関先でぶちまけそうになったくらいだ。

 

 

その上、兄ちゃんがハンディキャップがあることを理由に、なかなか良い仕事に巡りつけないでいることも、おれはなんとなく分かっていた。

 

いつも気丈に振る舞っているが、生活にあまり余裕はないのだろう。

 

だからおれは兄ちゃんがどこで何の仕事をしているのか気になってはいたものの、なんとなくはばかられて、いままで聞いてみたことは一度もなかったのだ。

 

 

それがまさか、こんな形で仕事中の兄ちゃんと会うことになるなんて・・・

 

 

時刻は午後1時30分を少し回ったころ、放送委員が今後の催しをたどたどしく読み上げる声が、体育館のスピーカーからも聞こえてくる。

 

 

そんなお知らせなど耳にも入らず、今おれはステージ脇の控室の中。

 

道化服に身を包んだ兄ちゃんと二人、目を合わせて向き合っていた。

 

 

 

 

 

『誰だ?』

 

先に声を発したのは、兄ちゃんの方だった。

 

あきらかにこちらを警戒している。

 

もう、何を言ってもごまかせる雰囲気ではない。

 

『そこから出てこい』

 

兄ちゃんの呼びかけに対して、おれは素直に演台の後ろから姿を現す。

 

何のためらいもなかった。

 

というよりも、ためらいとか、諦めとか後悔とかではなく、ただただ驚きだけがあふれかえって、脳が思考することを拒絶していたのだ。

 

兄ちゃんの方もおれの姿を見るやいなや、かなり驚いているのが表情から察せられた。

 

『おまえ、いったいどうして・・・』

 

『ここで何やってるんだ?』

 

兄ちゃんに問いかけにおれはようやく我に返ったが、のどの奥のべんがつっかえて上手く言葉が出てこない。

 

『えぇと・・・』

 

そう、やっとこさ声を絞り出してから、おれが真っ先に言おうと思いついたのは、何とかこの場を切り抜けるための言い訳だった。

 

しかし、次におれが発したのは、

 

『おれ、ピエロの腕の秘密を探りに来たんだ。』

 

『切断マジックのタネがどうしても分からなくて。』

 

という、バカが付くほど正直な回答。

 

 

分かってた。

 

これまで、どれほど似たような問答を繰り返してきたと思う?

 

おれと兄ちゃんが何日、何時間、本当の兄弟のように一緒に過ごしてきたと。

 

 

だから、おれがここでどんな言い訳をしたところで、兄ちゃんに隠し事をすることはできないと思ったのだ。

 

 

おれがなぜゲームで勝てないのか、兄ちゃんがいつも言ってたよ。

 

『おまえはほんと分かりやすいな!』

 

って。

 

 

出だしだけでもしゃべってしまうと、おれはもう止まらなくなって、ここに来た理由を洗いざらい兄ちゃんに白状する。

 

クラスメイトが切断マジックの話題で盛り上がっていたこと。

 

おれがピエロの秘密をあばいてやると大見え切って出てきたこと。

 

実はクラスメイトのためなんかじゃなくて、コロッケサンドを食べ損ねて個人的にマジックショーを逆恨みしていたこと。

 

午後のショーが始まる前に、ピエロの秘密を学校中に言いふらしてやるつもりだったこと。

 

 

後から思えば、コロッケサンドのくだりは特に言う必要はなかったが、気が動転してしまっていたのだから仕方がないだろう?

 

 

頭も呂(ろ)律(れつ)も回らない。

 

本当に声を出すだけで、伝えようとするだけで精いっぱいだったんだ。

 

 

そんな調子で、おれがつっかえつっかえに話している最中も、兄ちゃんはただじっと目を閉じて聞いてくれていた。

 

そしておれが一通り話し終えると、兄ちゃんは一度

 

『うぅん』

 

と唸ってから、まるで話しだしの呼吸を整えるかのように、消え入るくらいの声でゆっくりとつぶやいた。

 

『なるほどねぇ』

 

 

おれは、次の兄ちゃんの言葉を待った。

 

内心バクバクで、今にも逃げ出してしまいたかったが、自分でまいた種だ。

 

どうすることもできない。

 

 

少しうなだれ気味にイスに座っていた兄ちゃんが顔を上げておれの目を見据えなおし、先ほどとは打って変わって、はっきりと芯の通った声でこう言った。

 

『オレのパフォーマンス、どうだった?』

 

 

今何と言った?

 

兄ちゃんは今おれに向かって、怒るでもとがめるでもなく、ショーの評価を求めてきた?

 

おれはてっきり怒られるものだと思っていたから、予想外の状況に対応できず、ポカンと口を開けたまま再び固まってしまった。

 

 

そんなおれの様子を見て兄ちゃんは、今度は言い聞かせるような語り口調になる。

 

『おまえはオレの前ではいつも礼儀正しいが、他ではそういうわけじゃない。』

 

 

次は何が始まった?

 

兄ちゃんの意図が呑み込めない。

 

 

そんなおれの動揺など知ってか知らずか、構わずに兄ちゃんは続ける。

 

『知らない物事にはまず疑ってかかるふしがあるし、中学に上がってからはそれに輪をかけて、うがった見方をするようにもなった。』

 

『違うか?』

 

相変わらず話している意図は分からない。

 

しかし、兄ちゃんの言っていることは全て的を得ていた。

 

やっぱりおれは見抜かれている?

 

いや逆に、どんだけ分かりやすいんだよ、おれ。

 

 

兄ちゃんはいぜんとして黙っているおれを見つめたまま、一呼吸おいてから、こう締めくくった。

 

『まぁ、つまりだな。』

 

『そんなふうにうがって物事を見てるおまえの目でも、切断のトリックを見抜けなかったんだから・・・』

 

『オレの演技力もたいしたもんだろう?』

 

『あれだけステージを転げまわってて、義手だとバレないように振る舞うのに、すっげぇ練習したんだぜ?』

 

 

・・・・・。

 

おれはもう、面食らってしまって、

 

『へぁは?』

 

自分でもどこから空気が抜けたのか分からないほどのマヌケな返事をしてしまった

 

 

なにそれ? 何で怒んないの?

 

人がいいなんてもんじゃないよ。

 

近いうちに悪い大人にダマされるよ、兄ちゃん・・・

 

 

それに演技力って言ったって、さっきのショーのピエロはまるで・・・

 

 

ピエロは、まるで・・・

 

 

なんだろう?

 

なにかモヤモヤとしたものが沸き上がってくるのを感じながら、ショーで見たピエロの姿と、目の前の兄ちゃんの姿が重なってフラッシュバックしていく。

 

バケツに片足を突っ込んで転んだ後、ブクブクとふくれた体をばたつかせながら『助けて、起こして』と騒ぐ ピエロ 兄ちゃん。

 

やっとこさ立ち上がったかと思えば、今度はもう片方の足にロープを絡ませて仰向けにひっくり返る ピエロ 兄ちゃん。

 

ふらふらと立ち上がっても、何度も壁にぶつかってはステージの上を端からはしまで転げまわる ピエロ 兄ちゃん。

 

 

あぁ、そうか。

 

モヤモヤの正体がなんとなく分かりかけたところで、おれは兄ちゃんに向き直る。

 

そして次の瞬間にはもう、せきを切ったように抑えがきかなくなって、感情にまかせて言いたいことを全部言ってしまった。

 

『兄ちゃん、なんでこんな仕事してんの?』

 

『あんなふうにみんなに笑われてさ?』

 

『正直言って、すげぇカッコ悪いよ!』

 

『あれじゃまるで・・・』

 

『まるで、バカみたいじゃん!!』

 

 

あまりに唐突なおれの言葉のラッシュに、今度は兄ちゃんの方が面食らったようである。

 

 

だが、この時ショックを受けていたのは兄ちゃんだけではない。

 

 

やってしまった。

 

おれは、つい3秒前にしでかしたことを寒気がするほど後悔していた。

 

体が震えている。

 

自分で自分の言ったことが信じられない。

 

 

おれは兄ちゃんがこれまで苦労してきたのを知っていたのに。

 

兄ちゃんがあまり自由に仕事を選べる状況じゃないって分かってたのに。

 

ただ、兄ちゃんがみんなから笑われているのがどうしようもなく悔しくて、ムカついて、思わず口をついて出てしまった。

 

本当にそれだけだったのだ。

 

 

 

 

 

『それは違うぞ』

 

いつの間にか立ち上がっていた兄ちゃんが歩み寄ってきて、おれの右肩をがっしりとつかみながら重く静かに言った。

 

 

怒って、いる?

 

目線をこっちの高さまで合わせてまっすぐに見てくる兄ちゃんの険しい顔は、おれがこれまで一度も見たことのないものだ。

 

間違いない、あの人のいい兄ちゃんが怒っている。

 

 

『みんなにオレが笑われているんじゃない。』

 

『オレがみんなを笑わせてるんだ。』

 

『実際がどうであれ、オレはそう信じて全力で情けないピエロを演じている。』

 

兄ちゃんの言葉の一つひとつに熱がこもっていて、その迫力におれは思わず後ずさりそうになる。

 

だが、おれの肩をつかむ兄ちゃんの大きな左手がそれを許さない。

 

 

いったい何分間、そうしていただろうか。

 

まっすぐな兄ちゃんの目から視線を逸らすことができないで、おれたち二人はしばらくの間お互い何も言わず見つめあっていた。

 

 

このまま永遠に続くかとも思いかけた、その刹那、

 

『ピロリリリリリ・・・ ピロリリリリリ・・・』

 

イスの脇に置いてあった兄ちゃんのカバンから携帯の着信音が鳴り響き、止まっていた時間にひびを入れる。

 

おれが音にハッとしたときにはもう兄ちゃんは振り返っていて、カバンの中から呼びつけている携帯を急いで取り出し耳元にあてた。

 

そうして、向こうの相手と2~3往復ほど軽いやり取りを交わしたのち電話を切り、おれの方を見る。

 

『先輩たち、もう少し校内を回ってくるってさ。』

 

そう告げるなり、兄ちゃんはさきほどまで使っていたイスのところにもどり、もう一度腰を下ろした。

 

『まぁ、おまえも座れよ。』

 

兄ちゃんに促されて、おれは手近な丸イスを引き寄せ腰かける。

 

 

それを見た兄ちゃんはいつもどおり右肩を『パシッ』とたたいて、けれども顔は真剣なままで、少し遠くを見やった。

 

『おまえも気づいてたと思うけど、オレは腕がないから仕事探すのに苦労してた。』

 

兄ちゃんが、とつとつと話し始める。

 

『社会的弱者の支援って名目で採用してくれた会社はいくつかあったけど、ふたを開けてみれば結局そんなのは世間の体裁をよくするための広告でしかなかったりしてな。』

 

『いざ現場に放り込まれてみれば、オレはいつだって仕事ができない厄介者扱いだった。』

 

『もっと簡単に言えば、オレは、会社がお客様たちのご機嫌を取るための客引きピエロでしかなかったんだ。』

 

『だからオレは、自分の腕が無いことを死ぬほど嫌に思ってた。』

 

 

知らなかった。

 

兄ちゃんがそんなふうに思い悩んでいたなんて。

 

なにが、「本当の兄弟のように一緒に過ごしてきた」だよ。

 

全然兄弟でも友達でも、なんでもないじゃないか。

 

おれはいままで、兄ちゃんが苦しんでいるのに何も気づけないでいたんだから。

 

自分の底抜けのマヌケさと調子よさに腹が立って仕方がない。

 

 

兄ちゃんは話し続ける。

 

『会社で後ろ指さされるのにも、いいかげん耐えられなくなってきた頃かな、専門学校時代のダチからこのマジックショーの話を聞いたのは。』

 

『ピエロ役のバイトを募集してるって言うから、少しでも生活の足しになればと思って、最初は副業のつもりで始めたんだよ。』

 

『そしたら演者の先輩たちがすごく良くしてくれてさ、シンプルな言い方かもしれないけど、正直すげぇ居心地が良かった。』

 

『だからオレさ、気が付いたら完全にこっち一本でやっていきたいって思うようになってて、そん時勤めてた会社もやめて、正式にこのショーのメンバーに入れてもらったんだ。』

 

『ショー自体の稼ぎは多くないけど、付き合いのあるイベント会社の手伝いしたり他のショーの助っ人行ったりすれば最低限のやりくりはできるし、行政から支給される補助金とかも合わせれば何とかやっていける。』

 

 

『なにより、腕が無くて仕事ができないことを死ぬほどうとましく思ってたオレが、今は腕がないことを仕事にして観客のみんなを楽しませられるようになった。』

 

『同じピエロはピエロでも大違いだ。』

 

『だからオレは、この仕事に誇りをもってやってる。』

 

『それをこれ以上悪く言うってんだったら・・・』

 

そこまで言って兄ちゃんは話すのを止め、座っていたイスから身を乗り出しておれの顔をぐいとのぞき込んできた。

 

 

きっとまだ兄ちゃんは怒っている。

 

そう思うと、おれは言葉が出てこなくて、また黙り込むしかなかった。

 

 

そしたらさ。

 

にーぃって。

 

途端に、兄ちゃんがいたずらっぽく笑って見せて、

 

『もうゲーム貸してやんないからな!』

 

なんて言って、すぐにそっぽを向いたんだ。

 

なんていうか、柄にもなくアツく語ってしまった気恥ずかしさを紛らわそうとしたようにも見えた。

 

 

けれど、おれは笑わないで、

 

『いいよ、ゲームは別に。』

 

って、兄ちゃんの背中に向かって短く言った。

 

 

ちょっとだけ兄ちゃんがピクッと反応したように見えたけど、何も言ってこないから、おれは言葉を付け足す。

 

『それと、もう悪く言わない。』

 

そこまで言ってやっと兄ちゃんはまたこっちを向いてくれた。

 

少し顔が赤い。

 

 

でも、恥ずかしがってるとこ悪いけど、面と向かっている今だから、もう少しだけ言いたいことがおれにはある。

 

『おれさ、いつも遊んでくれる兄ちゃんのこと面白くてすっげぇ好きだったけどさ、なんていうか、今日はこれまでで、一番カッケェって思う。』

 

そんなクサいセリフを言ってのけたおれの顔をまじまじと見て、兄ちゃんが少しだけニヤけやがった。

 

 

バカ野郎!

 

今度はこっちが気恥ずかしくなるじゃんか!

 

 

だからもうおれは勢いに任せて、

 

『頑張れよ! 兄ちゃん!』

 

そう言って、思いっきり右の拳を突き出した。

 

 

『ビクッ!』

 

あれ?

 

兄ちゃん、今ちょっとビビったよな?

 

 

その反応におれも思わずニヤけそうになったもんだから、兄ちゃんの方もすかさず、

 

『おう!』

 

と返事して左拳を突き合わせる。

 

 

そうしておれたち二人は拳を合わせたまま、ほぼほぼ同時に噴き出してしまい、しまいにはお互い変なツボに入って笑ってしまっていた。

 

 

『じゃ、おれもう行くよ。』

 

ひとしきり笑い終えた後、おれは兄ちゃんに軽くあいさつして立ち上がる。

 

 

そして、控室を出ようとドアノブに手をかけたとき、

 

『ちょい待ち。』

 

と言って、兄ちゃんがおれを呼び止めた。

 

 

『何?』

 

反射的におれが聞き返すと、兄ちゃんは得意げに右肩を『パシッ』とやって、お決まりの寄り目の顔になって、おどけた口調で言ってきた。

 

『最後に一つ良いこと教えといてやろう。』

 

 

 

 

 

教室にもどった俺は瞬く間にクラスメイト全員に取り囲まれてしまった。

 

どうやらピエロの腕の秘密が知りたくて、フリータイムに校内を回ることもせず俺の帰りを待ち構えていたらしい。

 

俺が出て行くときはあれだけ尻込みしていたくせに、ほんとに都合のいい奴らだ。

 

しかし、臆面もなく潜入が失敗したことをみんなに告げたものだから、俺は全員から激しいブーイングを受けるハメになってしまった。

 

それでも、兄ちゃんが最後に教えてくれた情報を共有してやったおかげで、俺のメンツは保たれたわけだが。

 

 

『あそこのコロッケサンドな、毎月の第三土曜日になると駅前に売りに来てるみたいだぞ。』

 

 

さすがは兄ちゃん、頼りになるぜ。

 

 

もちろん、潜入に失敗したなんてのは、全くのでたらめである。

 

しかし、もしもクラス全員から総スカンを喰らうことになっていたとしても、おれはピエロの秘密を言うつもりは絶対にない。

 

そして俺が秘密を守っている限り、学校のやつらにバレることもないだろう。

 

 

なんてったって、うがった俺の目でも見破れなかったほどの演技力をあのピエロは持っている。

 

そうさ、あのピエロの腕は本物なんだ。

 

 

 

 

 

マジックショー、午後のステージ。

 

演目は午前中と全く同じ。

 

一度見ているショーをわざわざフリータイムに見に訪れる生徒は他にいないようすで、客席には午後からやってきた外部招待の父兄らがまばらに座っているだけである。

 

 

『ドッガシャーン!!!』

 

突然、騒々しい効果音が鳴り響く。

 

いったい何事か?

 

 

それはもちろんご存じの通り、あいつが登場した合図。

 

今まさに、バケツに片足を突っ込んだピエロが、盛大にずっこけながらステージ上に姿を現した。

 

 

そのパフォーマンスは誰がどこからどう見てもなさけない、本当に全身全霊でなさけない、全力フルパワーのコメディ。

 

コケて、転げて、ぶつかって、しまいにゃ腕まで切り落とされる。

 

 

そんなドタバタ劇を見るためにおれは最前列に陣取って、全力でなさけなくピエロを演じる彼に向かって精いっぱいの拍手と声援を送っていたのだった。

 

おしまい

単語ルーレットで出たワードで小話を書いてみる



 

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

ブログを書くにあたり文章力を高めたいと思いまして、今回はちょっとしたトレーニングをやっていきたいと思います。

 

 

何をするのかと言えば、ランダムで提示される3つの単語を使って、作文をしていこうという試みでございます。

 

みなさんも学生時代、国語の時間で経験があるのではないでしょうか?

 

「○○と××と△△の単語を使って、文章の内容を簡潔にまとめなさい」

 

・・・みないな。

 

テストの問題とかで出題されると『うっわ、クッソ面倒ぅくせぇ』って気持ちしかないですけれど、今回は軽くゲーム感覚でやっていこうと思います。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ 食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思うので、以下に昨日の夕飯の画像を載せております。

 

昨日の夕食



 

小話を書くための下準備をする

 

3つの単語

 

まずは小話の作成条件となる3つの単語を決めなければいけません。

 

ただ、「○○」と「××」と「△△」というようにこちらに書いてみても、わたくしが本当にランダムで選んだ単語かどうか、証明できないんですよね・・・

 

 

そこで今回は、ブラウザ上で利用できる以下「ランダム単語ガチャ」の抽選機能を使用させていただきました。

(引用元:ランダム単語ガチャ

 

抽選の結果として、「絶対」と「へそ曲がり」と「手品」の3つの単語を使って文章を書いていきたいと思います。

 

※各単語の使用箇所は赤色で表記しています。

 

 

 

文章の大筋

 

先にお伝えしておきますと、文章の大筋はできておりますので、こちらでは肉付けをしていく作業がメインとなっております。

 

この度は初回ということで、まずは量感をつかむことを目的として余裕をもって2日間に分けて書いていこうと思いますので、悪しからず。

 

 

 

小話「腕なしピエロ」

 

『つーまんね』

 

座り心地の悪いパイプ椅子にふんぞり返りながら、俺はこの日一番の退屈をかみしめていた。

 

 

何が楽しくて、こんな子供だましのマジックショーを見ていなければいけないのか。

 

 

あぁ、早く帰って「デビハン」の続きがやりたい。

 

退屈を紛らわせるように思いをはせるのは、おれがこのところ毎日のようにやりこんでいるテレビゲーム、「デビルズハンター2G」。

 

四天王の最後の一人がなかなか倒せなくて一昨日から苦心しているのだが、3日後にはゲームを兄ちゃんに返すことになっているから、今日は何としても先に進めなければ。

 

 

まぁ、ちぃとばっかし約束を過ぎたところで、どうせ人がいい兄ちゃんのことだ。

 

別に怒ったり、催促したりとかは、しないだろうけど・・・

 

おれとしては、やはり少し気が引ける。

 

 

実はと言えば、おれはこの前ほかのゲームを貸してもらったときに、間違って、ずっと前に兄ちゃんがたたき出した最速記録のクリアデータを消してしまっていた。

 

その時も兄ちゃんは、

 

『また記録更新すればいいから』

 

なんて言って許してくれたけど、今の兄ちゃんにあんな記録を出すことは無理なんじゃないかというのが、おれの正直な感想だった。

 

 

だから、それ以来おれはゲームの貸し借りにおいて小さなミスもしないよう、気を付けているのだ。

 

なんだか、兄ちゃんの人がいいのに付け入るような感じがして、あまり気分が良くないから。

 

 

そう。

 

兄ちゃんは昔から人がいい。

 

古いゲームをたくさん持っていて、おれが今まで興味を持ったものは全部貸してくれた。

 

ソフトもハードもいっぺんに持って行って良いって。

 

 

そんなだから、お小遣いを貯めるのが苦手なおれでも、遊ぶゲームに不自由したことはなかった。

 

時たまにグラフィックがきれいな最新ゲームのコマーシャルに興味を惹かれることもあるけれど、ドットの荒いゲームも味があって十分に楽しめる。

 

 

そういえば前に一度、兄ちゃんは最新のゲームに興味はないのかと、聞いてみたことがあっただろうか。

 

確かその時は、

 

『興味がないことはないが、操作についていけなくてな』

 

なんて言いながら右肩を『パシッ』と左手ではたいて、冗談めかしていたっけ。

 

 

あの寄り目をした兄ちゃんの何とも言えない顔ときたら。

 

おれは、その表情を思い出しかけて、少しだけ笑いがこみ上げそうになってくる。

 

 

その時。

 

『ドッガシャーン!!!』

 

 

突然、耳をつんざくような大きな音が響き渡り、俺が退屈真っただ中の現実に戻ってくる。

 

どうやら回想にふけるあまり、しばらく上の空になっていたらしい。

 

 

俺は音にビビッて少し体が跳ねてしまったのを、うぅんと伸びをしてごまかしつつ、ひとまず気を取り直す。

 

そして何事が起ったのかとあたりを見回すと、ステージの真ん中で、それが横たわっていることに気づいた。

 

 

さっきの音の原因となった張本人。

 

いつの間にかマジックショーに登場したピエロが、バケツに片足を突っ込んで盛大にずっこけているところだった。

 

 

 

 

 

ステージの上ではあいも変わらず調子の抜けた音楽に合わせて手品師がネタを披露し続けているが、そのどれもが、どこかで見たことがあるような使い古されたものばかり。

 

あまりの芸のなさに早々に見切りをつけたクラスメイトたちが数人、さっきこの体育館を抜け出していってしまったのをの思い返しながら

 

『俺もバックレれば良かった』

 

なんて後悔しながら、5回目のあくびが出て目をこする。

 

 

今日は年に一度の学園祭。

 

俺の通っているこの中学校では毎年の恒例行事となっている。

 

学園祭とはいうものの高校や大学とは違い生徒の自主性はほとんどなく、あらかじめ学校側が用意した催しを適当に回るだけ。

 

このマジックショーも、そんな催しの1つとしてわざわざ招待されてきたものだ。

 

別に何を企画しようが学校の勝手だが、このショーだけは例外。

 

午前中一杯をつかって学年ごとに順番でショーを見るよう、きっちりとタイムスケジュールが組まれていたものだから、他を回るつもりでいた多くの生徒から不満の声が上がっていた。

 

まぁこっちから招待しておいて『お客さんが集まりませんでした』じゃバツが悪いから、最低限の配慮ってやつなんだろうけど。

 

まったく、大人の都合に振り回される俺らの身にもなってほしい。

 

しかも、よりにもよってなんで、俺ら2年生の順番が一番最後なんだ?

 

また、あの押しの弱い学年主任のせいか?

 

早くしないと、楽しみにしいてた屋台のコロッケサンドが売り切れてしまう。

 

 

 

 

 

結局、ショーが終わったのは12時30分を回ったころ。

 

おれは体育館からダッシュでお目当ての屋台に向かったものの、着いた先の屋台の脇に裏向きで「コロッケサンド」と書かれた看板が立てかけられているのを見て、なんとなく状況を察した。

 

しかし、まだ営業準備中という可能性も残っている。

 

コロッケサンドを諦めきれなかったおれは思い切って、近くにいた店主と思われるおじさんに店の開店時間について尋ねてみた。

 

すると、おじさんは少し驚いたような顔をしながら、おれの方を振り返ってくる。

 

どうやら何か作業の途中だったようで、おれの言ったことが上手く聞こえていなかったらしい。

 

『おれ、コロッケサンド買いに来たんですけど・・・』

 

今度は率直に用件を伝えると、おじさんは状況を飲み込んで、首から下げていたタヲルをはずしながらおれに向き直り、

 

『あー、ごめんね、今日はもう終わっちゃったんだよ。』

 

と答えてくれた。

 

やっぱりな。

 

9割がた予想はしていたけれど、少しばかりすきっ腹にこたえる。

 

『そうですか、ありがとうございました。』、

 

『お仕事中お邪魔しました。』

 

そうお礼を言って、おれがおじさんにカクっと頭だけを少し下げて見せると、おじさんの方も軽く片手を上げながら会釈を返してくれた。

 

そして、おじさんが屋台の骨組みを取り外しにかかったのを見て、おれはがっくりと肩を落とし、しかたなく自分のもと来た方向へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

俺は腹が立っていた。

 

実はコロッケサンドの屋台を後にしてから他の店も回ってみたのだが、目ぼしいものはすでに、全て売り切れてしまっていたからだ。

 

かろうじてありつけたのは、あんぱん二つと200ミリリットルのパック牛乳一本だけ。

 

なんだよあれ。

 

どこにでも売っているような袋パンと牛乳なのに、コンビニより割高じゃんか。

 

なにより、俺はつぶあん派だってのに。

 

つまらないマジックショーのために昼食のあてをつぶされたあげく、他にまともな選択肢もないなんて、本当に冗談じゃない。

 

その上、さっきバックレたクラスメイトたちが美味そうにコロッケサンドをほおばっているのを見かけたものだから、余計に頭にきている。

 

俺は教室の前まで戻ってくると、たてつけの悪くなった引き戸のつっかえるのも構わず、力任せにずらし開いた。

 

 

なんだ?

 

少しばかり教室が騒がしい。

 

何事かと思い、適当なグループに割って入ってよくよく話を聞いてみると、どうやら意外なことにさっきのマジックショーの話題で盛り上がっているようなのだ。

 

『あのピエロの切断マジック、マジヤバくなかった?』

 

ここでみんなが話している切断マジックというのは、ショーの最後の山場に披露されたパフォーマンスで、手品師が巨大な剣でピエロの右腕を切り落とし、再びくっつけるというものだ。

 

たしかに、他のマジックはどう考えてもトリックが見えみえだったのに、あのときピエロが腕を切り落としたカラクリは見当もつかなかった。

 

だから、クラス全員で各々が考えるトリックの予想を披露しあっているうちに、だんだんとヒートアップしていったということか。

 

 

なるほどねぇ。

 

そんなクラスメイト達の様子を見て、俺はある一つのへそ曲がりな考えが頭に浮かび、次にそれが口をついて出る。

 

『おまえら、そんなに気になるんだったら、俺があばいてきてやろうか?』

 

『ぇあ?』

 

隣にいた一人の男子が馬鹿笑いをやめて、つぶれたカラスのような鳴き声を上げる。

 

『だから、俺があのピエロの腕の秘密、突き止めてやるって言ってんの!』

 

『マジックショーは午後も公演予定があるから、あのピエロは今ごろステージ脇の控室で休憩をとっているはずだ。』

 

『分かるだろ? 潜入するんだよ!!』

 

俺が一層大きな声で言い放つと、一瞬あたりが静まりかえったが、ややあって、つぶれたカラスがもう一声を上げた。

 

『やめとけよ、さすがにそれはヤバいって。』

 

なんだよ。

 

おまえらその程度かよ。

 

腹が立っていたせいで、俺もいつもより少し勢いづいていたのかもしれない。

 

予想外に周りのノリが悪いことが面白くなくて、クラス全員を一瞥(いちべつ)してからフンっと鼻を鳴らした。

 

念のため、他についてくるやつがいないかと思い呼び掛けてはみたが、みんな興味はあるものの、リスクを冒して潜入するまでの気はないようだ。

 

いつもは先生たちに反抗しまくっている悪ガキどもでさえ、外部の人間に手を出すのはマズイと考えているらしい。

 

意気地なしどもめ。

 

 

普段の俺ならここでシラけてしまって、実行には移さなかっただろう。

 

だが今日の俺には、あのマジックショーに個人的な恨みがある。

 

下に恐ろしきは食い物の恨み。

 

コロッケサンドを食いそびれた憂さ晴らしに、おまえらの秘密を学校中に言いふらしてやる。

 

午後のステージにあのピエロがどんな顔で立つかと思うと、今から楽しみでしかたがねぇ。

 

覚悟しとけよ、「腕なしピエロ」!!

 

 

 

 

 

ステージ脇の控室前。

 

ここまでは拍子抜けするほどすんなりと来られてしまった。

 

途中で2度ほど先生に声をかけられたが、どうせ午後はフリータイムだから、どこにいようがとがめられることはない。

 

むしろ、マジックショーのために早く体育館に行って良い席を確保しておきたいなんて言ったら、笑って送り出してくれた。

 

もちろん嘘はついていない。

 

俺専用の特等席で、あのピエロの裏のうらまでしっかりと見てやる。

 

 

しかし静かだ。

 

ここに着いてかれこれ5分。

 

舞台袖の幕の陰に隠れて様子をうかがっているが、人の気配どころか、中から物音ひとつしない。

 

出かけている?

 

確証はなかったが、しびれを切らした俺は意を決して、控室のドアをノックした。

 

もしも誰かいたら、適当に応援の言葉でもかけて出直せばいい。

 

だがそんな俺の心配をよそに、中から返事はなかった。

 

 

そっとドアノブに手をかけ、回す。

 

ぐいと力を込めて、ほんの指一本分ほどだけドアを開けると、『カチャリ』とラッチが音を立てた。

 

中からの反応はない。

 

 

指三本分。

 

そのすき間に顔の片側をひっつけて、中の様子を覗き見る。

 

いないぞ。

 

 

俺はもう、思い切ってドアを開けて中に入り、急いで、それでいて静かに閉めた。

 

やはり、控室の中には誰もいない。

 

 

俺は安心して力が抜けそうになったが、まだ目的を果たしていないことを思い出し、頬を張って気合を入れなおす。

 

今が絶好のチャンスだ。

 

このままどこかに隠れて、ピエロが戻ってくるのを待ち伏せよう。

 

 

幸いにも隠れ場所はすぐに見つかった。

 

控室の奥の方、壁ぎわに寄せるようにして、学園祭の開会式で使った演台が置かれている。

 

ショーの邪魔になるからと、とりあえずここに運び込まれたのだろうか。

 

何にせよ、ピエロを待つには好都合だ。

 

 

俺は演台と壁のすき間に体を潜り込ませ、息をひそめる。

 

さぁ、準備は整った。

 

これより潜入ミッションを開始する。

 

 

俺はまるでスパイにでもなったような気分で、興奮して息遣いが激しくなるのを抑えつつ、ターゲットであるピエロのことを思い返す。

 

 

それはそうと、あのピエロどんな格好してたっけ?

 

たしか、ダサいメイクにへんてこな付け鼻と付けヒゲ、それにいびつな形のメガネ。

 

腕と足と、特にお腹まわりが風船でも詰めたようにパンパンにふくれていて、ピンクと黄色のスパンコールがチカチカする服には女性アイドルが着る衣装のようなフリルがたくさん付いていたはずだ。

 

いい歳してあんな格好して恥ずかしくないのかよ。

 

俺が大人になったら、あんな仕事はゴメンだね。

 

おまけに大勢の観客にあんなに笑われてさ。

 

さっきのショーでのピエロの情けないパフォーマンスを思い出し、俺は思わず顔が引きつった。

 

 

それはそうと、ピエロはいつ戻ってくるだろうか。

 

午後の公演までにはまだ少し時間があるはずだ。

 

 

いや、待てよ?

 

そもそも他の演者が先に戻ってくる可能性だって十分にあるじゃないか。

 

それに人数が増えれば、身動きも取りづらくなる。

 

もし見つかったら、ピエロの秘密を言いふらす俺の作戦も全て水の泡だ。

 

こんな奥の方に隠れていたら、余計に抜け出すのが難しくなるぞ。

 

 

そう思うやいなや、俺は演台の陰から出ようと身をよじらせた。

 

その時だった。

 

『カチャリ』

 

控室のドアが開いて、誰かが入ってきたのは。

 

つづく

テンションのハイとロー あなたは使い分けられていますか?



 

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

今回はわたくしが普段よく行っているテンションのコントロール法について、書いていきたいと思います。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ 食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思うので、以下に昨日の夕飯の画像を載せております。

 

昨日の夕食

 

 

極度のハイテンション・ローテンションは時に日常生活の妨げとなる

 

テンションが下がりすぎor上がりすぎると

 

さて、みなさまはご自身のテンションのハイとローを、上手に使い分けられておりますでしょうか。

 

かく言うわたくしはと言えば、昔っからテンションの取り扱いに難儀しております。

 

 

躁うつ病とまではいかずとも、いままでことあるごとに周囲の大人から、

 

『キミはテンションの上がり下がりの幅が非常に激しい』

 

と指摘を受けてきたような人生でございました。

 

 

沈むときはとことんマイナス方向に突き進むこと、ジブリ作品の「もののけ姫」に登場するタタリ神のごとく。

 

 

反対に、たかぶっているときは内から漏れ出してくるものの抑えが効かなくなり、時たま狂った行動まで起こす始末。

 

 

数か月前に帰省した際にも、30歳を超えたいい大人が、父親から、

 

『奇声を上げるな!』

 

と注意される。

 

そんな調子でございます。

 

 

ですからもう最近は逆に面白くなってしまいまして、心の中で自分の状態に「陰気モード」、「狂気モード」と名前を付けているくらいです。

 

 

こういった具合に、針が振り切れると日常生活に支障をきたしかねませんので、テンションの極度の偏りを抑制するために、行っている対処法がいくつかございます。

 

 

あくまで、わたくしのトチ狂ったテンションをどうにかする際の方法ですので、参考になるかはわかりかねますが、多少なりともお役に立てれば幸いです。

 

 

 

テンションが低いとき

 

料理をする

テンションが低下しネガティブな方面に思考が偏ってくると、よからぬ考えが際限なく頭に浮かんできてしまいます。

 

料理は作業工程で考えることが多いため、ネガティブな考えが入り込むすき間を埋めてくれます。

 

3Dモデリングをする

こちらも料理と同様の理由になります。

 

作るものの用途に適した寸法や、実際に3Dプリンターで出力した後の強度など、考慮する項目が多いです。

 

単純作業をする

反対に、ネガティブな思考のせいで他に頭を使うことが手につかないという場合には、できるだけ何も考えずにこなせる単純作業がおすすめです。

 

次第に慣れてリズムよく作業をこなしていると、乱れていた思考にも落ち着きが戻ってきます。

 

寝ない

気がめいっていると、なかなか眠れないときがございます。

 

そんな時はたいてい、やらなければいけない事を憂いていることが多いため、潔く寝ることをあきらめて、憂いの原因となっている作業を片付けてしまうのも1つの手です。

 

そうすると、翌日の午前中には眠気があるかもしれませんが、夜になれば心置きなく眠ることができるでしょう。

 

 

 

テンションが高いとき

 

筋トレをする

テンションが高くなるのは、たいていは、エネルギーが有り余っているためです。

 

そんな時は適度に体を動かして、余分なエネルギーを放出してやると良いでしょう。

 

大声を出す

こちらも1つのエネルギー放出の手段です。

 

しかし、やたらめったらするのではご近所の迷惑になりますので、周囲の環境には最大限の配慮をしましょう。

 

ちなみにわたくしは、いつも車の中で大熱唱しております。

 

 

 

以上、テンションは用法用量を守って、上手に付き合いましょう。

『マイナスをプラスに!』 ※あずきバーが出てくる話です

昨日の夕食

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

本日はわたくしの外見的なマイナス要素を題材としてお話をしていきたいと思います。

 

 

ついでに言っておきますと、今回は食べ物要素多めです。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ アイキャッチ画像が昨日の夕飯である理由は、食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思ったためです。

 

 

 

”物は考えよう”とはよく言ったもんだ

 

みなさまは、なにかしらご自身の容姿にコンプレックスをお持ちでしょうか。

 

かく言うわたくしの場合は語りつくせないほどございますが、その中で今回お話したいこととして、”歯並びが悪い”ということが挙げられます。

 

しかも象牙質の割合が多いために、しっかり磨いても黄色くなりやすい性質ときたものですから、見た目の問題であればマイナスな要素として捉えられることしかないでしょう。

 

 

でもね、わたくし自分のこの歯並びを、うとましく思ったことなど一度たりともないんですよ。

 

むしろ矯正など、とんでもない。

 

 

『なぜか?』

 

と問われれば・・・

 

自他ともに嫌気がさすほどの食いしん坊であるわたくしにとって、唯一無二のメリットがあるからでございます。

 

 

さぁ、そこで取り出したるは、タイトルでもちらと登場した”あずきバー”。

 

『めちゃくそ固ってぇでやんの!』

 

でおなじみの、まさにクレイジージャパニーズのど真ん中をゆく、ソウルフルフードでございますね。

 

 

実はわたくしのこの歯並び、このあずきバーのような固ーい食べ物をかみ砕くのにすこぶる適しているのでございます。

 

 

向かって右側、上下の犬歯の先端同士がピンポイントで触れあって、万力がごとくアゴの力を一点に集中することができる。

 

しかも象牙質たっぷりですので、食材に硬さ負けしない十分な頑強さを備えております。

 

 

この歯があるおかげで、凶器にもなりそうな本格派のフランスパンでも、カッピカピに乾燥しきったスルメでも、おもいっきり喰らいこむことができるのです。

 

そしてあずきバーであれば、冷凍庫から出したて、まだ周りに白い冷気がただよっている状態の一番固いヤツが理想の対戦相手というのですから、頼もしいことこの上ない。

 

 

もう少し例を挙げると、以前「あかだ」というお菓子を食べたことがございます。

 

米粉で作ったお団子を油で揚げたお菓子で、丸っこいあられのような見た目をしているこの「あかだ」。

 

日本一かたいお菓子とも紹介されているようで、食べるのに大変苦労するようでございますね。

 

 

それを1つ、個包装の袋から取り出して口に放り込み、バリボリのバーリボリ。

 

食した感想はと言えば、素朴な甘みとしっかりとした歯ごたえがあって、まことに美味しい限りでございました。

 

 

 

マイナスと捉えるかプラスと捉えるかはあなた次第

 

まっすぐな棒はそのままで、曲がった棒は曲がったなりに良い使い方があるものです。

 

今までコンプレックスであると感じていたものを、時には違う角度で見直してみるのも良いのではないでしょうか。

『鳥には紫外線が見えるって、ご存じ?』 強迫性障害(不潔恐怖)のはなし

昨日の夕食

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

 

タイトルから察せられた方もいらっしゃるかもしれませんが、本日はかなり重めの内容となっております。

 

『カンの良いガキでも大人でも、わたくしは来るもの拒まずでございます』

 

 

ただ、痛々しいことや汚物に関することなど、あまり感じのよろしくない話もいたしますので、苦手な方はブラウザバックないしはウインドウのそっ閉じをオススメいたします。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ アイキャッチ画像が昨日の夕飯である理由は、食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思ったためです。

 

 

 

強迫性障害ってどんな病気?

 

あまり知られていないけど誰でもなりうる病気

 

さて、みなさまの中に強迫性障害というワードに聞き覚えのある方がどれほどいらっしゃるでしょうか。

 

いわゆる”こだわり”の強さによっておこる内面的な病なのですが、普通に生活を送っている人からしてみれば、まず知ることはない病名だと思います。

 

 

しかし、実はこの病気の症状、その一端であれば、みなさまも似たような経験をしたことがあるかもしれません。

 

 

例えば外出をするとき、

 

『家の鍵をかけたか』 『ガスの元栓を閉めたか』

 

といった不安がよぎったことはございませんか? ・・・ありますね。

 

 

そうです、始まりはなんてことのない、日常生活のあるあるなんですよ。

 

 

ですが、こういった日々の何気ないことが過剰に気になるようになり、生活に支障をきたしだしたら、あなたも強迫性障害の気を疑った方が良いかもしれませんね。

 

 

 

強迫性障害の種類

 

かの有名な元サッカー選手、デビッド・ベッカム氏も、ご自身が強迫性障害であると公言されています。

 

氏の場合は、身の回りのありとあらゆるものを一直線に置いておかないと気が済まないという、強いこだわりがあるようです。

 

 

このほかにも、

 

”何かしらの動作や物の配置を左右対称にしなければ気が済まない”

 

”自分の行いにより誰かを傷つけてしまうのではないかと不安にかられる”

 

など、一口に強迫性障害と言ってもいくつか症状に種類があります。

 

 

かく言うわたくしの場合は、手や体に触れるものに必要以上に汚れを感じてしまう「不潔恐怖」というものに悩まされてきました。

 

その具体的な症状について詳しくは後述いたしますが、簡単な例では電車のつり革につかまれなかったり、お店などのドアの取っ手が触れなかったりと、日常生活に大きな支障が出ていたのは間違いありません。

 

 

 

わたくしが強迫性障害になるまで

 

小学校時代の呪われた下校途中

 

『あいつが通った場所を踏むと、呪いがかかるぞ!』

 

なにかのごっこ遊びの一幕でしょうか、実にほほえましいですね。

 

 

『ふざけんじゃねぇよ』

 

 

小学校に入学した当初から2~3年ほど、わたくしは毎日の集団下校の際に同級生から強制的に、何かの”オニ”に仕立て上げられていました。

 

 

オニに触られたら呪われるだのなんだの。

 

ごっこの延長線上にあるようでいて、人によっては”いじめ”とも感じるかもしれないグレーなお遊び。

 

 

数人がかりで標的にされていたから、あの子はずっとオニのまま。

 

来る日もくる日も汚物のようにさげすまれ続けていた。

 

 

はい、わたくしでございます。  わたくしは、ウンコでした。

 

 

 

妄想癖のある変わった子

 

ところで、今回のタイトルでも触れましたが、みなさまは「鳥には紫外線が見える」ということをご存じですか?

 

どうやら鳥たちは、獲物となる小動物の尿などから反射された紫外線を視認することができるらしいんです。

 

鳥ってすごいですよね。

 

かわいらしくて、カッコよくて、なんといっても自慢の翼で大空を自由に飛び回ることができる。

 

みなさんの中にも、一度はそんな鳥になってみたい、うらやましいと思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

わたくしはその逆です。

 

 

それでは、余談はこのくらいにして、鳥とは打って変わって地の底を這いまわっている、わたくしの話に戻ります。

 

 

わたくしは昔から妄想が膨らみやすい性分でして、小学校では授業中いつも、自分の両の手を2匹の龍に見立てて戦わせるなんていう一人遊びをしていました。

 

そのほかにも、なにか面白いイメージが頭に浮かんでは、ただ一点を見つめてボケェ~っと小一時間を潰している。

 

まぁ、自分で言うのもなんですが、変り者ではありましたよ。

 

 

だからね、イメージしちゃったんです。

 

 

まるで鳥が獲物の痕跡から発せられる紫外線を見るように、

 

踏めば呪われると言われた、わたくしの歩いたその跡から、なにか暗い色のものが湧き出してくるのを。

 

 

空想の翼とは誰が言ったか。

 

わたくしにとってのそれは鳥のような自由な翼ではなく、車にひかれた犬のウンコのように、わたくし自身を地べたに這いつくばらせるためのクサビになりました。

 

 

 

気になりだしたら、もう止まらない

 

小学校の中高学年から中学校の中盤にかけて、業後は各自が自由な時間に下校できるようになったため、以前のようなお遊びはなくなりました。

 

でもね、一度こびりついたあの暗い色のイメージは、そう簡単には引き剥がれてはくれなかったんですよ。

 

 

前の席の同級生が鼻くそをほじった手で、プリントを渡してくること。

 

体育の後に汗だくになった状態の同級生に、頻繁に自分の席を占拠されたこと。

 

いろいろな、誰かの触ったものが気になりだし、そこには決まってあのイメージが付きまとっていました。

 

 

さらに輪をかけて、そのイメージのあるところに他のものが触れると、伝染して範囲が広がっていく。

 

分かりますか?

 

 

触れないように、

 

ぜったいに触れないように、

 

絶えず神経が張り詰めて、それでも自分の行動範囲がじわじわと狭まって、追い詰められていく感覚。

 

 

そして最後のさいごには逃げ場がなくなって、自分の手に、体に、汚いという感覚を伴ってイメージが付着する。

 

そうなったら、もうね・・・

 

『洗い流すしかない』

 

って、どうしようもなく抑えが効かなくなるんです。

 

 

 

闘病期間とその後

 

身体的な外傷が表れる中学校終盤

 

手を洗い出して数日と経たずに、わたくしの両手と腕の皮膚はぼろぼろと崩れるようになりました。

 

まるで重度のアレルギーかアトピー性皮膚炎でも起こしたかのように。

 

 

手洗いを繰り返すたびに血がにじんで、腕全体がとてつもなく痛くて。

 

それでも洗わずにはいられないんです。

 

だって手が汚く思えて仕方がないから。

 

 

簡単に洗えない学生服は、適度な摩擦のある壁に何度もなんどもこすりつけました。

 

比較的滑らかなコンクリート製の通路の壁。

 

1枚ずつはツルツルしていても、間の目地材がザラついていて全体的にデコボコもしているトイレのタイル。

 

学生服が傷ついて破れないように気を使いながらも、できる限り汚れをこそげ取ってくれそうな場所を探しては、毎日こすりつけていました。

 

 

もはや、トイレの壁が衛生的に汚いとか、そんな基準ではありません。

 

良かったんですよ、あの汚れたイメージさえぬぐい取れれば。

 

 

腕、肩、足、腰、胸、腹、背・・・

 

全身あらゆる箇所、あらゆる体勢で壁に張り付き身をよじる姿は、奇怪と言うほかなかったでしょう。

 

 

 

帰宅後の儀式と化した風呂場

 

家に帰ればいの一番に風呂場に直行。

 

その際に、わたくしが学校から持ち帰ったカバンの表面や、玄関から風呂場までわたくしが通った同線を除菌シートで拭いてもらうよう、母親に頼みます。

 

母親は文句も言わず、わたくしの頼みを聞いてくれました。

 

 

そして風呂場では短いときで1時間、長いときで1時間半ほどかけて全身をくまなく洗い流します。

 

 

断っておきますが、決してただの長風呂ではございません。

 

 

左官職人が漆喰を塗るかのごとく、あるいは漫画家が原稿にベタ塗りを施すかのごとく、寸分のすき間も残さないようにするから。

 

一度洗い終えた箇所にまだ洗っていない箇所が触れると、再び汚れが伝染してしまう気がして、その都度洗いなおさなければ気が済まないから。

 

1時間半ずっと、ただ途方もなく洗い続けているんです。

 

 

加えて風呂場の床、壁、水回りの取っ手やシャワーヘッドのにぎりなど、わたくしの体が触れた可能性のある場所はすべて同時に洗っておかなければ、そこから汚れが伝染してしまう気がして仕方がありませんでした。

 

 

また、症状がエスカレートしてくると、誰かが吐いたかもしれない空気中の二酸化炭素や水蒸気と言った分子レベルのものまで意識するようになってしまっていたわたくし。

 

挙句の果てはボディソープをつけた手を口につっこんで、おえつを上げながら喉の奥まで洗っていました。

 

 

 

クソにまみれた1度目の高校時代

 

突然ですが、みなさまは最大で何時間まで便意を我慢することができますか?

 

 

失礼。 たいへん汚い話でございます。

 

ですが、これがわたくしの1度目の高校生活のほぼ全てであると言っても過言ではありません。

 

 

ここまで言えばお察しの通り、高校へ進学してもわたくしの不潔恐怖の症状は続いていました。

 

発症の原因である中学を出て環境が変われば、多少は良い方向にゆくかもしれないという淡い期待もありましたが、全くそんなことはありませんでしたね。

 

 

そして高校生活中でわたくしの一番の問題となっていたのが、そう、

 

「トイレ」

 

その頃わたくしは、もう外で用を足すことすら、ままならなくなってしまっていたのです。

 

 

そんなわたくしがどうしたか。

 

もう、先ほどの質問の意図がお分かりいただけたと思います。

 

はい、 我慢しました。 一日中。

 

 

朝6時に家を出て1時間半ほど電車に揺られていきますが、早いときでは車内でもう便意を催します。

 

そこからは地獄の時間。

 

学校では滅多にトイレに行く日はなく、帰宅するまで長いときでは10時間ほど張り裂けそうな腹の痛みを我慢し続ける。

 

 

当然ですが、昼食も便意を我慢しながら済ませます。

 

母がわたくしの病状を心配しながら、毎朝早起きして作ってくれたあの卵焼き。

 

つらいだけの心に砂糖の甘さが染みてきて涙が出そうなくらい美味しいのに、破裂しそうな大腸の痛みに耐えながらでは、苦痛以外の何物でもありませんでした。

 

 

そして、やっとの思いで帰宅。

 

ですが帰ってこられたからといって、すぐトイレには行かれません。

 

決まっています。 風呂場に直行。

 

でもね、家に帰ってこられた安心感とシャワーから流れるお湯のあたたかさに触れると、我慢の限界を迎えてしまうことがあるんですよ。

 

そんなとき、本当に迷惑をかけるんですけれど、母に『ごめんなさい』と一言あやまるんです。

 

それでね、母も許してくれるんですよ。

 

そうして、出してしまうんです。 風呂場で。

 

出した後もわたくしは洗い続けているのをやめられませんから、後始末はいつも母がしてくれたんです。

 

 

情けないですよ。 ほんっとうに情けない。

 

小学生の頃、寄ってたかってウンコのようにさげすまれ続けて。

 

それが巡りめぐって病気になって。

 

高校生になってもその呪縛から逃れられずに、本物のウンコたれになってしまったんですから。

 

 

 

成り立たない高校生活

 

風呂場で隅々まで体を洗い終われば、外はとうに夜。 時間は夕飯間近。

 

その日の宿題やら次の日の予習やら、済ませなければならないことはたくさんあります。

 

ですが、汚れたものに触れないようにと一日中神経が張り詰めていたせいで、極度の精神的な疲労がわたくしを襲います。

 

加えて、便意を我慢し続けたことによる肉体的な疲れも相まって、まるで人の脳みそを借りてきたかと思うほど、信じられないくらいに全く頭が働かない。

 

もどかしい。

 

そしてなにより、教科書やノートなどの教材は学校で汚れたものとして認識してしまっていたため、カバンから取り出すときや机に上に並べるときに気になって仕方がありません。

 

 

当然のことながら、そのような状況で勉強が思うように進むわけもなく、すぐに授業についていけなくなりました。

 

 

 

3年間の休学を経て退学へ

 

高校に入って最初の夏休みを目前に控えたわたくしが、

 

『夏休みの宿題をするのに家で教材を広げたくない』、

 

『できる限り汚れを家に持ち込みたくない』

 

という一心で試みたことがあります。

 

 

それは炎天下の中、最寄駅から自宅までの帰り道にあったJAバンクの外階段が作る日陰に潜り込んで、夏休みの宿題をするというもの。

 

ですが、そんな無茶苦茶なやり方で終わるはずないのです。

 

諦めて自宅で宿題に向かいますが、当時はすでに授業どころではなくなっていたため、もう宿題で問われている意味すら理解できません。

 

 

結局、わたくしは宿題を終えることもできず、夏休みが終わるころには再びつらい学校生活に戻ることにも恐怖を覚えるようになり、そのまま休学することとなったのです。

 

そしてそのまま2年が過ぎ、わたくしは1つ目の高校を退学するに至ったのでありました。

 

 

 

余談

 

実は2年後のこの時には病状はだいぶ回復しており、自発的に高校で勉強しなおすことを考えておりました。

 

復学する権利自体もまだ残ってはいたのですが、学年が離れてしまった当時の同級生たちと顔を合わせるのはいささか気まずくもあったため、退学した運びとなります。

 

 

そうして、次年度の受験で新たに別の高校に入りなおすのですが、それはまた別のお話とさせてください。

 

 

 

強迫性障害(不潔恐怖)を経験して伝えたいこと

 

強迫性障害は決して珍しい病気ではないようなのですが、患ったことがある身からすれば、周囲から理解されるのはまだ難しいと感じています。

 

だからこそ、家族など周りの人のサポートが非常に大切な病気でもあります。

 

 

ただ、病気なんだから同情しろとか、手を差し伸べてくれとは言いません。

 

むしろ、わたくしの不潔恐怖のように、差し出された手を心ではありがたく思いつつも、どうしても触れたくないこともあり得ます。

 

 

つまり、本人の病状によって対応も様々。

 

サポートするにも深い理解と注意が必要ですので、なにをしたら良いか分からないのであれば、そっと見守ってください。

 

 

また、周りと違った行動をとることもあるため気になるかもしれませんが、くれぐれも興味本位で近づいたり、いたずらに茶化したりするようなことは絶対にやめてあげてください。

RABの皆さんが武道館ライブをするんですって

昨日の夕食

皆さんこんにちは、こんばんは、そしてオタマッパギー。 サンケン6でございます。

 

 

今回はちぃとばっかし趣向を変えて、わたくしが好んでよく動画を視聴しているダンスグループ「RAB」の皆様についてご紹介していきたいと思います。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ アイキャッチ画像が昨日の夕飯である理由は、食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思ったためです。

 

 

 

元気をもらえるブレイクダンスパフォーマー集団「RAB」

 

RABとは何ぞや?

 

RAB、もといREAL AKIBA BOYS(リアルアキバボーイズ)は”オタク ダンスパフォーマー集団”として、アニソンやボカロ音楽にのせてダンスを踊っている方々です。

 

全員が凄腕のブレイクダンサーやヒップホップダンサーでありながら、なおかつゴリッゴリのオタクという、なんとも濃ゆいメンバーが集まっています。

 

 

そんな彼らは今年で結成17年。

 

現在メンバー9人で、ニコニコ動画YouTubeでの動画投稿をはじめ、数多くの大規模なライブイベント開催などマルチに活躍されています。

 

昨年末のNHK紅白歌合戦では歌手のYOASOBIさんのステージに出演し、大いにファンを驚かせてくれましたね。

 

 

 

イカ れた したメンバー紹介

 

赤色担当 涼宮あつき さん

圧倒的センター

アフロのあっちゃん

 

黒担当(ペンライトは紫) けいたん さん

敏腕社長

あなたの手腕のおかげで『今日もオシゴト頑張れるよ』

 

青色担当 DRAGON さん

やたら脱ぎたがるRABの肉体派

ドラムラ良いよね

 

黄色担当 ムラトミ さん

わたくしの最推し

生粋のダブルM

変人

変態

酒カス

ヤニカス

パチンカス

スロカス

腰の具合がどうなったか心配

 

緑色担当 マロン さん

みんなのお母さん

たまにはおうちに帰って休んでください

 

白担当 ネス さん

いつもツッコミご苦労様です

あと個人的にお礼が言いたい

 

オレンジ担当 ゾマやかじゃない! さん

女装に定評のある元保育士

『ゾマやかじゃない!ということでゾマやかじゃない!で~す』

 

水色担当 とぅーし さん

なんくるないさー(この人は雑にイジるくらいが丁度いい)

 

朽葉色担当 龍 さん

パネェ末っ子

天才オタク高校生ダンサーもいよいよ高校卒業間近

 

ピンク担当 チャカ さん

RABの創始者

他のメンバーと芸能活動はしていない

たまーにひょっこり顔を出すレアキャラ

 

 

 

RABの夢

 

世に生きるオタクならば、だれもが一度は願うであろうこと。

 

それは、

 

「二次元の世界に入ること」

 

 

当然、オタクであり二次元が大好きなRABのメンバーも、次元の壁を超えることを目標に掲げています。

 

 

では、いったいどうすれば二次元の世界に入ることができるのか?

 

 

彼らが導き出した答え、それは、

 

『自分たちがアニメ化されるっきゃねぇ!!』

 

というシンプルかつ大胆な方法でした。

 

 

そしてここで、本ブログのタイトルでも触れた日本武道館が大きな意味を持つことになるのです。

 

 

 

行くぞ! 日本武道館へ!!

 

アニメ化されるためには、自分たちが有名になる必要があると考えたRABの面々。

 

Q.『じゃあ、いったいどのくらい有名になればいいの?』

 

A.『アーティストたちの聖地とも呼ばれる日本武道館でワンマンライブが開催できるほどになれば、有名人と言えるでしょうに!』

 

てな流れで、彼らはこれまで日本武道館でのライブ開催に向けて、努力を積み重ねてきました。

 

 

 

夢を現実に

 

日本武道館ワンマンライブと聞けば、凡人以下のわたくしからすれば、とてつもなく大きな目標です。

 

ですが、RABはついにそれを達成しようとしています。

 

これって、ほんとにすごいことだと思うんですよ、わたくし。

 

なにより、誰かが夢を叶えるとき、あるいは叶えようとして頑張っているときの姿は、見る人に勇気を与えてくれます。

 

 

実はわたくしもRABから勇気をいただいており、彼らの雄姿を見ようと以前はオンラインでライブにも参加しておりました。

 

 

今はそんな懐の余裕もなくなってしまいましたが、

 

『立ち直ったらもう一度、彼らのステージを見に行きたい』

 

そう思わせてくれるものが、RABにはあります。

 

 

 

夢を持って 生き 活きる

 

30歳を過ぎて無謀な退職をしたわたくしが夢についてどうのこうの語れる立場ではありませんが、何かしらの目標を持つことは大切だと思います。

 

 

寿命を切り売りしながらただ漠然と生きるのではなく、目標に向かって活きる方が、きっとウン万倍も楽しいんです。

 

 

だから、こんなわたくしで、こんな状況だって、クリエイターとして活動したいという目標を持って動いています。

 

 

皆さんは何か、自分が活きるための夢や目標を持っていますか?

『やらねば』 年齢30歳を過ぎたおっさんが退職してから始めたこと

昨日の夕食

皆さんこんにちは、こんばんは、生きてます。 サンケン6でございます。

 

 

本日はわたくしが退職をしてから始めたもののうち現在も継続している活動についてのお話です。

 

生きていくうえで大事なことから割とどーでもいいことまで、洗いざらい書いていこうと思います。

 

 

 

※ 本アカウントの趣旨は、年齢30歳を過ぎて仕事を辞めたおっさんがブログを書くことにより、生存報告をするというものになっております。

 

※ アイキャッチ画像が昨日の夕飯である理由は、食事を見ればその人間が現在どんな生活レベルにあるのか分かりやすいと思ったためです。

 

 

 

こんな感じでやってます

 

食費の見直し(主食編)

 

稼ぎがないなら出費を抑える。

 

退職して真っ先に考えたのが、多くはない貯金をどうやってやりくりしていくかということでした。

 

そこで最初に、当時からわたくしの浪費ポイントの一つであった食費を見直すことにしたんですね。

 

こと食費の計算については前職に就いてからずっと家計簿をつけていたので、かなり正確な数値をはじき出すことができました。

 

『過去の自分 グッジョブ!』

 

 

そいでまぁ、あれこれやった結果として、現在の食費は以前の3分の1程度までに抑えられております。

 

 

具体的に実践内した容としては、メインのたんぱく源を鶏むね肉、豆腐、納豆に絞ったことですかね。

 

特に、むね肉はもも肉や豚バラ肉のおよそ2分の1のお値段で購入できるので、最安価の動物性たんぱく質として重宝しております。

 

ちなみに、アイキャッチ画像の麻婆豆腐もむね肉と鶏のレバーを4:1の割合でフードプロセッサーにかけて作ったひき肉を使用したものです。

 

鶏レバーも、もも肉の3分の2程度のお値段で非常にリーズナブル。

 

安価な鉄分の補給源としておすすめです。

 

 

 

食費の見直し(間食編)

 

困ったことに元来の食いしん坊な性分でして、定期的にチョコレート成分、スポンジ成分、クッキー成分、プリン成分、フルーツ成分、etc... といった栄養源を無性に摂取したくなる衝動に駆られて止みません。

 

まさに「やめられない 止まらない」

 

某製菓会社のCMに、これほど痛く共感する日が来ようとは・・・

 

 

ただ、こんなことを言っていると、

 

『節約するなら、お菓子は真っ先にやめるべきじゃろがい!』

 

てな具合に、方々から厳しいツッコミが入りかねません。

 

でもそこだけはどうしても自分に甘くなってしまうんですよ。

 

『お菓子だけにね ♪』 (ごめんなさい 殴ってもらって構いません)

 

 

とは言え何も対策をしていないわけではなく、市販のお菓子はほぼ買わず、時たまプリンやドーナツといった簡単なお菓子を自前で作って禁断症状を抑えております。

 

 

 

筋トレ&有酸素運動

 

1日中おうちに引きこもって体を動かさないでいると精神衛生上よろしくないと思いましたので、週に3日、1回30~40分のペースで筋トレと有酸素運動を続けております。

 

これが驚いたことに、体形が整うのなんのって。

 

実際どのくらいかというと、わたくしが過去に最も運動していたであろう、中学時代に水泳部に所属していた頃よりも整ってしまっているんですよこれが。

 

『これまでの人生どんだけ運動できてなかったんだよわたくし』

 

 

30歳過ぎてから歪んだ体形を戻すのは難しいと聞き及んでいたものですから、まさかここまでの効果が出るとは思ってもみませんでした。

 

やはり、なにごとも継続する意思があるか否かなんですかねぇ。

 

 

 

IF断食

 

食費軽減と健康維持が一度にできるのでプチ断食を生活に取り入れました。

 

具体的な試みとしては、夕食から翌日の昼食まで16時間以上の間隔を設けるようにしております。

 

 

朝食をとらない分食費の節約にも貢献するかと思いきや、退職以前は睡眠時間を惜しんで元から平日は朝食をとっておりませんでしたので、あんまし変わってないと思います。

 

 

健康維持についても、正直なところ内面のことなのであまり実感がございません。

 

定期的に運動していることや、仕事のストレスが無いことも関係してくるでしょうし。

 

 

ただ、仕事を辞めてから丸一年近く経ちますが、この間に病気などはしておりません。

 

電気代をケチって、冬場の暖房も1月の中旬まで使わずに我慢しておりましたが、わりかし平気でした。

 

 

結局のところ、どこまで断食の効果が出ているのかは定かではないですが、ともかく健康であるのはありがたい限りです。

 

病気になったら、お医者さんにかかったり、適当な食事が必要になったりと何かと物入りですので。

 

 

 

クラウドソーシングでのお仕事受注

 

クラウドワークス経由でブログのライティングやデータ入力のお仕事をいただいています。

 

とは言えまだ単価が安いので、生活資金を稼ぐには至っていません。

 

 

他には、受注実績を獲得するために、初めのうちはアンケートなどタスク系の案件も多く受けていました。

 

 

 

3Dプリント

 

前職で働いているときは、プライベートでクリエイター活動をするのが目標だったんです。(現実はプライベートなどほぼありませんでしたが)

 

だからと言って、

 

『今の状況でやってる場合でもないでしょうに・・・』

 

 

そうですね、わたくしもそう思います。

 

ですが、このままやらないでいると一生手を付けないような気がしているんです。

 

 

なのでやります。 やっております。

 

雑貨などを作ってハンドメイド系のアイテムを取り扱うサイトで販売しています。

 

 

以上わがまま9割、

 

そして、

 

『勤続中におもいきって3年分もアプリのライセンスを購入してしまっていたので、使わないともったいねぇよなぁ?』

 

という貧乏根性1割で動いています。

 

 

 

できることからやっていこう

 

ここまで書いてきました通り、これといって何か特別な活動をしているわけではございません。

 

 

ただ今は、ずっと家にいる状態で毎日を自堕落に過ごしてしまわぬよう、簡単なことでも何かしら継続しながら生活していくことが大切であると考えております。

 

社会復帰を見据えるなら、生活リズムは崩したくありませんからね。

 

 

それに、退職してしばらくは再び外に出て働くことに恐怖心がありましたが、今ではアルバイトからでももう一度始めたいと思えるようにもなっております。

 

こんなおっさんができるアルバイト、何がありますかねぇ・・・

 

 

何にせよ、なんとか生きていかなければいけませんので、ありふれた表現ではありますが『できることからやっていこう』と思います。